デイサービスの稼働率とは

デイサービスを安定して運営するためには、利用者の登録人数だけでなく、定員に対して実際にどの程度利用されているかを確認する必要があります。その際に用いられる指標が「稼働率」です。

稼働率を確認すれば、空きが多い曜日や、新規利用者の獲得が必要な人数、黒字化に必要な利用回数などを具体的に把握できます。本記事では、デイサービスの稼働率の計算方法や損益分岐点の考え方、開業後に確認したい目標について解説します。

デイサービスの
稼働率とは

利用可能な人数に対する実際の利用割合

デイサービスの稼働率とは、事業所で受け入れられる最大人数に対して、実際にどの程度利用されたかを示す割合です。稼働率が高いほど、用意している利用枠が効率よく使われていることになります。

ただし、稼働率が高いだけで必ずしも十分な利益が残るとは限りません。利用者の要介護度や取得している加算、人件費、送迎費なども売上や利益に影響するため、稼働率は収支とあわせて確認することが大切です。

登録者数と延べ利用回数の違い

登録者数は、事業所と利用契約を結んでいる利用者の人数です。一方、延べ利用回数は、それぞれの利用者が一定期間内に実際に利用した回数を合計した数字です。同じ利用者が月に8回利用した場合、登録者数では1人、延べ利用回数では8回として数えます。

そのため、登録者数が多くても、週1回利用の人が中心であれば稼働率は上がりにくい場合があります。反対に、登録者数がそれほど多くなくても、週2~3回利用する人が多ければ延べ利用回数は増えます。

指標 数え方 確認できること
登録者数 利用契約を結んでいる実人数 事業所と継続的な関係がある利用者の規模
延べ利用回数 一定期間内に実際に利用された回数の合計 利用枠が実際にどの程度使われているか

デイサービスの
稼働率の計算方法

基本的な計算式

デイサービスの稼働率は、1か月の延べ利用者数を、営業日数と1日の利用定員を掛けた数字で割って算出します。

稼働率=1か月の延べ利用者数÷(営業日数×1日の利用定員)×100

定員10名・月25日営業の場合の計算例

1日の利用定員が10名、1か月の営業日数が25日の事業所では、月間の最大受け入れ可能回数は250回です。実際の延べ利用回数が175回だった場合、稼働率は次のように計算します。

175回÷(25日×10名)×100=70%

計算項目 数値
1日の利用定員 10名
1か月の営業日数 25日
最大受け入れ可能回数 250回
延べ利用回数 175回
稼働率 70%

なお、この計算例は稼働率の算出方法を示すための仮定です。実際には、営業日数や定員、利用実績を事業所ごとに当てはめて計算してください。

曜日別の稼働率も計算する

月間の平均稼働率だけを確認していると、曜日ごとの利用状況の偏りを見落とす可能性があります。例えば、月曜日の稼働率が90%でも、金曜日が50%であれば、金曜日の空き枠を埋める対策が必要です。

曜日別の稼働率を算出し、空きが集中している曜日を特定すると、ケアマネジャーへ案内すべき利用枠や、曜日変更を提案する利用者を判断しやすくなります。

デイサービスの稼働率は
何%を目指すべきか

全国平均は目安のひとつとして確認する

福祉医療機構が公表した2019年度の調査結果をもとにしたカイポケの記事では、事業規模区分別の利用率として、地域密着型68.9%、通常規模型71.2%、大規模型(Ⅰ)77.6%、大規模型(Ⅱ)77.2%と紹介されています。

ただし、これらは2019年度の調査結果であり、現在の全国一律の目標値を示すものではありません。地域の競合状況や定員、営業日数、サービス内容によっても適正な稼働率は変わるため、参考値として扱いましょう。

自施設の収支から目標を決める

目標稼働率は、全国平均をそのまま採用するのではなく、自施設の収支から逆算することが重要です。家賃や人件費が高い事業所では、全国平均と同程度の稼働率でも赤字になる可能性があります。

一方、固定費を抑えられている事業所や、適切に加算を取得している事業所では、同じ稼働率でも利益が残りやすくなります。まずは赤字にならない損益分岐点を把握し、その数値を上回る目標を設定しましょう。

損益分岐点となる
稼働率の計算方法

利用1回あたりの限界利益を確認する

損益分岐点とは、売上と費用が等しくなり、利益も損失も発生しない状態です。デイサービスでは、月間の固定費と、利用1回あたりに得られる限界利益から、黒字化に必要な延べ利用回数を求められます。

限界利益は、利用1回あたりの平均売上から、食材費や消耗品費など利用回数に応じて増減する変動費を差し引いて算出します。

  • 利用1回あたりの限界利益=利用1回あたりの平均売上-利用1回あたりの変動費
  • 損益分岐点となる延べ利用回数=月間固定費÷利用1回あたりの限界利益
  • 損益分岐点稼働率=損益分岐点となる延べ利用回数÷月間最大受け入れ回数×100

損益分岐点稼働率の計算例

月間固定費が320万円、利用1回あたりの平均売上が1万円、変動費が1,000円の場合、利用1回あたりの限界利益は9,000円です。損益分岐点となる延べ利用回数は、320万円を9,000円で割った約356回となります。

1日の定員が20名、月25日営業であれば、最大受け入れ回数は500回です。この場合、損益分岐点稼働率は約71.2%となります。

計算項目 仮定した数値
月間固定費 3,200,000円
利用1回あたりの平均売上 10,000円
利用1回あたりの変動費 1,000円
利用1回あたりの限界利益 9,000円
損益分岐点となる延べ利用回数 約356回
月間最大受け入れ回数 500回
損益分岐点稼働率 約71.2%

上記は計算方法を示すための仮定です。実際の利用単価は、利用者の要介護度やサービス提供時間、加算などによって異なります。固定費や変動費についても、自施設の事業計画や実績をもとに計算してください。

稼働率だけで黒字かどうかを判断しない

稼働率が高くても、人員を過剰に配置していたり、送迎範囲が広く燃料費や車両費が増えていたりすると、利益が残りにくくなります。反対に、稼働率が同程度でも、適切な人員配置や加算取得によって収支が改善する場合があります。

稼働率を確認する際は、売上高、人件費率、利用者1人当たりの売上、送迎費、営業利益などもあわせて管理しましょう。

開業後1~12か月の
稼働率目標の考え方

開業後の稼働率は、地域性や開業前の営業活動、既存事業所からの利用者移行の有無などによって大きく異なります。そのため、すべての事業所に共通する月別の適正値はありません。

以下は、開業後の進捗を管理するための目標設定例です。公的な基準ではなく、自施設の事業計画と実績を比較するための管理目安として活用してください。

期間 稼働率の目標例 主な取り組み
開業1~3か月 20~40% 事業所の認知獲得、ケアマネジャーへの訪問、見学・体験利用の受け入れ
開業4~6か月 40~60% 紹介元別の契約率確認、空き曜日の周知、初回利用後のフォロー
開業7~9か月 60~75% 利用頻度の見直し、欠席時の振替、既存利用者の定着対策
開業10~12か月 損益分岐点以上 収支計画の見直し、人員配置の調整、翌年度の目標設定

開業1~3か月は紹介ルートをつくる

開業直後は、地域のケアマネジャーや地域包括支援センターに事業所の存在を知ってもらうことが優先されます。サービスの特徴だけでなく、受け入れ可能な曜日、送迎エリア、対応できる利用者像を具体的に伝えましょう。

見学や体験利用を受け入れた後は、本人や家族の反応をケアマネジャーへ報告します。相談から見学、契約に至る割合を記録すると、営業活動の課題を把握しやすくなります。

開業4~6か月は曜日ごとの偏りを改善する

利用者が増え始めた段階では、月間稼働率だけでなく、曜日別の空き状況を確認します。特定の曜日だけ利用希望が集中している場合は、空いている曜日への変更や追加利用を提案します。

営業時には「現在空きがあります」と伝えるだけでなく、「火曜日は入浴対応可能」「金曜日は○○地域の送迎が可能」など、紹介しやすい情報に整理することが重要です。

開業7~9か月は利用頻度と定着率を確認する

新規利用者数だけでなく、利用開始後に継続しているか、欠席が増えていないかを確認します。利用中止が新規契約と同程度発生している場合、登録者数や延べ利用回数は増えません。

利用者本人や家族への聞き取り、利用目的に合ったプログラムの提供、ケアマネジャーへの定期的な報告を通じて、利用継続を妨げている原因を把握しましょう。

開業10~12か月は事業計画を見直す

開業から1年が近づいたら、実際の売上、人件費、利用単価、欠席率、曜日別稼働率などを当初の事業計画と比較します。損益分岐点を下回っている場合は、単に新規利用者を増やすだけでなく、費用構造も確認します。

利用者が増えるほど人員や送迎車両の追加が必要になる場合もあります。稼働率の向上によって増える売上と、追加で発生する費用を比較したうえで、次年度の目標を設定してください。

曜日別に空きが
発生する主な理由

通院やほかの介護サービスと重なっている

利用者はデイサービスだけでなく、訪問介護や通所リハビリ、訪問看護などを組み合わせて利用している場合があります。また、定期的な通院日や家族が対応できる曜日との兼ね合いで、利用希望が特定の曜日に偏ることもあります。

地域内で利用希望が集中しやすい曜日を確認し、空き曜日に利用できる人をケアマネジャーへ具体的に案内しましょう。

入浴や機能訓練の提供日に偏りがある

入浴や個別機能訓練、特定のレクリエーションなどを実施する曜日が限られていると、そのサービスを希望する利用者が特定日に集中します。職員配置やプログラムの都合が、曜日別稼働率の偏りにつながるケースです。

利用希望の多いサービスについては、提供日を分散できないか検討します。ただし、職員の負担や配置基準を踏まえ、無理のない範囲で調整する必要があります。

送迎ルートや受け入れ条件が合っていない

利用枠が空いていても、送迎エリアや車両の乗車定員、利用者の身体状況によって受け入れられない場合があります。特に送迎時間が長くなる地域では、ほかの利用者の到着時間にも影響します。

曜日ごとに送迎可能な地域を整理し、営業先に共有しましょう。単なる空席数ではなく、実際に受け入れられる条件を含めた空き情報を伝えることが重要です。

空き情報がケアマネジャーに伝わっていない

事業所内では空き状況を把握していても、ケアマネジャーに伝わっていなければ紹介にはつながりません。カイポケでは、受け入れ可能な曜日や時間などを定期的にケアマネジャーへ伝える体制を整えることが、利用者獲得の取り組み例として紹介されています。

空き状況は変化するため、月1回などと決めつけず、空きが発生したタイミングでも共有しましょう。

欠席・入院・利用中止で
稼働率が下がる場合の対策

欠席理由を記録して分類する

欠席が発生した際は、「欠席」とだけ記録するのではなく、体調不良、通院、家族の都合、入院、サービスへの不満など、理由を分類します。理由によって必要な対策が異なるためです。

例えば、通院による欠席が多ければ曜日変更、迎えの時間を忘れるケースが多ければ事前連絡などが考えられます。欠席者と理由を一覧化し、繰り返し欠席している人から対応しましょう。

前日連絡や振替利用を提案する

リハブクラウドでは、欠席対策として、欠席が多い利用者のリスト化、前日の電話連絡、休んだ場合の振替利用などを紹介しています。

体調不良時に無理な利用を促すことは避ける必要がありますが、通院や家族都合による欠席の場合は、本人・家族・ケアマネジャーと相談したうえで、空きのある別曜日への振替を提案できます。

参照元:リハブクラウド公式HP(https://rehab.cloud/mag/3428/)

入院者の復帰見込みを確認する

利用者が入院した場合、退院時期や退院後の身体状況が分からないまま利用枠を長期間確保すると、稼働率が低下する可能性があります。一方、早い段階で契約終了と判断すると、退院後の生活支援につながらないおそれがあります。

本人や家族、ケアマネジャーと連絡を取り、退院の見込みやサービス再開の可能性を確認します。復帰まで時間がかかる場合は、一時的な空き枠として新規相談を受けられるか検討しましょう。

利用中止の兆候を早めに把握する

欠席回数の増加や、利用中の表情・発言の変化、家族からの相談は、利用中止の兆候である可能性があります。利用目的と提供しているサービスが合っているか、送迎時間や職員の対応に不満がないかを確認します。

利用中止が決まってから理由を聞くのではなく、日頃のモニタリングや家族との連絡を通じて問題を把握し、改善できる点があれば早めに対応しましょう。

新規利用者の獲得と
既存利用者の定着の違い

新規獲得は空いている利用枠を埋める取り組み

新規利用者の獲得では、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターへの営業、ホームページでの情報発信、見学・体験利用などを通じて、利用相談を増やします。

営業時には、事業所の特徴だけでなく、空いている曜日や送迎範囲、入浴・機能訓練の対応状況など、ケアマネジャーが利用者へ提案する際に必要な情報を伝えましょう。

既存利用者の定着は空き枠の発生を防ぐ取り組み

既存利用者の定着では、継続して利用したいと思えるサービスを提供し、欠席や利用中止を減らします。利用者本人だけでなく、家族の負担軽減やケアプラン上の目標達成につながっているかも重要です。

利用中の様子や変化をケアマジャーへ具体的に報告することで、サービスの必要性が共有されやすくなります。本人の目標に沿った支援や、家族との定期的なコミュニケーションも継続利用につながります。

新規利用者数と利用中止者数を分けて管理する

月に5人の新規利用者を獲得しても、同じ月に5人が利用中止となれば、登録者数は増えません。新規契約だけを営業成果として評価すると、利用者が定着していない問題を見落とす可能性があります。

新規利用者数、利用中止者数、純増数、利用開始後の継続率を分けて管理し、獲得と定着のどちらに課題があるかを確認しましょう。

指標 確認する内容
新規利用者数 一定期間内に利用を開始した人数
利用中止者数 一定期間内に利用を終了した人数
純増数 新規利用者数から利用中止者数を引いた人数
継続率 利用開始後も一定期間継続している利用者の割合
CHECK
安定した稼働率を目指せる
デイサービスFCを選ぶ

デイサービスの稼働率を安定させるには、新規利用者を獲得するだけでなく、曜日別の空き状況や欠席率、利用中止者数を継続的に管理する必要があります。

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稼働率だけでなく
空きが生まれる原因を確認する

デイサービスの稼働率は、1か月の延べ利用者数を、営業日数と1日の利用定員を掛けた数字で割ることで計算できます。ただし、月間平均だけでは、曜日ごとの偏りや欠席、利用中止の影響までは把握できません。

曜日別稼働率、登録者数、延べ利用回数、欠席率、新規利用者数、利用中止者数をあわせて管理し、空きが生まれている原因を確認しましょう。そのうえで、新規営業、振替利用、利用者の定着、人員配置や費用の見直しを進めることが、安定した事業所運営につながります。