デイサービスのM&Aとは

デイサービス(通所介護)の経営において、後継者不在や収益悪化への不安から、M&A(事業売却)を検討する経営者が増えています。本記事では、M&Aによる事業承継のメリットをはじめ、気になる譲渡価格の相場や「のれん代がつかない」という厳しい現実、買い手がつく施設の条件まで詳しく解説します。

デイサービスのM&Aが増加している背景

現在、介護事業所の倒産は過去最多水準に達しており、赤字事業所の割合も多く経営環境は非常に厳しい状況にあります。こうしたなか、深刻な人手不足や物価高、後継者不在といった課題を解決し、事業を存続させるための有効な手段として、第三者へのM&A(事業譲渡)を選択するデイサービスが増加しています。

※参照元:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service24/index.html)

デイサービスをM&Aで売却・譲渡するメリット

デイサービスをM&Aで事業譲渡・売却することには、主に以下の3つの大きなメリットが存在します。

  • 従業員の雇用継続と、利用者への継続的なサービス提供を維持できる。
  • 廃業に伴う原状回復費用等のコストを回避し、創業者利益(売却益)を確保できる可能性がある。
  • 大手グループの採用力や充実した研修制度などのリソースを活用して事業を発展できる。

廃業という選択を避けることで、地域社会への貢献を続けながら経営課題を解決できる点が大きな魅力です。

デイサービスのM&A価格相場と評価の現実

事業の売却を検討する際、最も気になるのが譲渡価格です。ここでは一般的な算出方法と、業界特有のシビアな現実について解説します。

一般的な算出方法と相場の目安

一般的な企業価値の評価には、インカムアプローチ・コストアプローチ・マーケットアプローチという3つの手法が存在します。中小規模のM&Aにおける相場の目安としては、「時価純資産価額+営業利益の2〜5年分(のれん代)」として算出されるケースが一般的であり、これを基準に交渉が行われます。

「のれん代ゼロ」の現実と金融債務の清算

しかし、デイサービス特有の厳しい現実があります。通所介護は許認可のハードルが比較的低く、定員により利益の上限も決まりやすいため、前述の「のれん代(営業利益の数年分)」は原則としてつかないケースが多いのです。そのため、多額の売却益を得るというよりも、譲受側に金融債務(借入金)を引き継いでもらう「ゼロ円譲渡」や、債務清算自体が実質的なゴールとなるケースが多い実態を理解しておく必要があります。

M&Aを成功させるための必須条件と注意点

厳しい市況のなかで、買い手から選ばれる事業所になるための条件と、進行中のリスクについて解説します。

買い手がつく(譲渡できる)施設の条件

買い手がつきやすい事業所には条件があります。まず、経営者が抜けても現場が回る「自走組織」であること、拠点別・事業別の正確な収支管理ができていること、そして地域医療機関との連携が構築されていることです。また、単独拠点や地方の過疎エリアは買い手がつきにくく、政令指定都市などで複数拠点を展開していることが求められやすい傾向にあります(異業種からの新規参入を狙う買い手の例外はあります)。

売却時に注意すべきリスクと留意点

売却を進める際の注意点として、経営方針の変更によるスタッフや利用者の離脱リスクを防ぐための丁寧な説明が欠かせません。また、情報漏洩を防ぐ秘密保持契約(NDA)の徹底や、買収監査(デューデリジェンス)で厳しく見られる労務管理(未払い残業代など)の適正化を事前に行っておくことが不可欠です。

デイサービスM&Aの手続き・流れ

デイサービスのM&Aは、概ね以下のような手続きで進行します。

  1. 専門家への相談と自社情報の整理
  2. 買い手企業とのマッチングおよびトップ面談(基本合意)
  3. デューデリジェンス(企業価値やコンプライアンスの詳細調査)
  4. 最終合意・契約、関係者への説明と経営権の移転

各ステップで専門的な知識が求められるため、慎重に準備を進めることが大切です。

まとめ

デイサービスのM&Aは、従業員の雇用や利用者のサービスを守りつつ事業を存続させる有効な選択肢です。のれん代がつかない等の相場の現実を冷静に把握し、自社の価値を高めた上で、業界に精通した専門家に相談しましょう。